判型:A4変型サイズ245×257mm(角背上製)/頁数:120/ハードカバー
定価:本体3,800円(税別)/発売:2012月9月15日/発行:平凡社
有野永霧写真集『日本人景 温泉川』
この写真集のあとがきで著者は「日本人景」について〈人類は、自然と寄り添いながら、時に敵対しながら今日まで生きてきた。わたしたちが今見ている風景は、自然の法則が形づくってきたものと、人間の作為によって作り上げられたものとの複合体である。人は、自然にさまざまな手を加えることで、自然風景を人工風景にしてきたのだ。日本の風景も、風土を縦糸にし、人為を横糸とした織物だといえよう。永年にわたって織り上げられ出来あがった今日の風景から、日本人のものの見方や考え方がみえてくる〉と。また「温泉川」については〈自然の悠久の時間の中で流れていた川辺に温泉が見つかると、人の手が入り、川の姿が大きく変えられていく。小屋が立ち、湯治場ができ、民宿、旅館、ホテルが建ち、さらには大ホテル群が林立してくる。それらと歩調をあわせるように、脇を流れる川にも、治水の名目、営業や経営上の事情などさまざまな理由で河岸工事がなされる。自然の川が、人の手が入ることで、「温泉川」という人工の川に変わるのだ。その間に、意識的に、時に無意識的に、国民の自然観や美意識や感性が塗りこめられていくのである〉と述べている。観光施設や世相として「温泉」を捉えるのではなく、「温泉」のそばを流れる川から「日本人」を見つめるというとても地味だが、際立ってユニークな視点による一つの「日本人論」である。そのために著者は全国の温泉地700ヵ所余りを巡ったという。その静謐なモノクロームプリントが見事な印刷で再現されている。
有野永霧写真集『日本人景 温泉川』
大船温泉(北海道)
中尾温泉(岐阜)
岩尾別温泉(北海道)
恐山温泉(青森)
比田温泉(島根)
白峰温泉(石川)
黒川温泉(熊本)
有馬温泉(兵庫)
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